焼入焼戻直後
鋼を加熱すると、炭素が原子レベルで溶け込むようになります。(この状態をオーステナイトと言う。)
その状態から冷却すると炭素がそれ以上溶け込めなくなり、飽和状態となります。さらに冷却すると溶け込んでいた炭素原子が元に戻ります。
しかしこの冷却が速すぎる場合、炭素原子が元に戻るよりも早く組織が固まってしまい、原子が過飽和な状態となります。(マルテンサイト組織)
通常よりも原子の数が多い(=密度が高い)ことにより、その組織は外部からの衝撃に強い(=硬度が高い)ものとなっています。この現象を利用したのが焼入です。
- ・焼入後150~200℃程度に加熱し焼戻(低温焼戻)を行うことにより、組織が安定し耐磨耗性が上がり、より強靭になり、さらに経時寸法変化も実用上、問題なくなります。一般的に焼入は焼戻とセットで行います。
- ・一方、焼入し400℃程度の高温で焼戻を行い、硬さと靭性を両立させる(バネ組織)焼入・焼戻を「調質」とも言います。
弊社の焼入焼戻の特徴
変形、変寸が少なくかつ強靭性が得られます。
- ・ソルト(液体)で加熱するので、その浮力により自重変形が少ないです。
また液体中で加熱するため炉ヒータからの放射熱の影響が少なく、均一に加熱されます。 - ・そして焼入時の温度差が少なく無理なストレスを加えない、恒温焼入が主体なため、焼入時の衝撃を必要最小限に抑えています。
- ・また、特殊焼入れ法のオーステンパー処理と称する、変形・変寸が少ないだけでなく、同じ硬さで約3倍衝撃値が高い処理も可能です。(炭素鋼の場合0.6%C以上、あるいはCr、Moなどが含まれた焼入性の良い材料に適します)
- ・プレステンパー処理により薄板部品で平坦度が要求される部品の焼入も行っています。
- ・少量の部品(1個単位でも)でも小回り良く処理できます。(塩浴焼入法が主体であるためです)
弊社では小物精密部品の浸炭焼入れの受注を多く頂いております。