熱処理の歴史 ~日本刀と熱処理~

2022.05.16
日本刀の製造で鋼を真っ赤になるまで熱し、水で急速に冷やす光景をご存じではないでしょうか。

この作業が”焼入れ”であり、鋼を硬くすることが出来ます。
焼入れした鋼は硬いですが、脆い性質のため、”焼き戻し”を行う必要があります。
変態温度を超えない範囲で再加熱することで硬くて強い鋼となります。

(これは、私たちが行っている熱処理業務と同じですね)

また、日本刀の特徴の一つとして、反りが挙げられると思います。
よく切れて、強度や靭性も持たせるために、棟の部分と刃の部分では異なる組織へと変化させます。

方法としては、特殊粘土を焼入前に塗る際の厚さ*によって、各部の冷却温度を調整します。
その結果、材料組織の熱膨張係数に差が出ることで、美しいアーチ形の反りが生じます。

*…薄く塗った刃の部分はマルテンサイトという硬い組織へ、厚いところは
  トルースタイトという少し柔軟性のある組織に変態します。

日本刀づくりの基本技術は約1000年前にはほぼ確立していたそうです。
焼入れや冷却の温度、炭素の含量・硬さが異なるものを組み合わせて製造される地鉄など
工程ごとに強靭性を増し、鋭さを得る工夫がなされています。

熱処理と刀鍛冶の優れた技術と経験によって作られる日本刀が、
海外からも評価されているのも納得できますね!

(N.T.)


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#火曜日は熱処理の日 #金曜日は金属の日